人事評価の業務プロセスを効率化する人事評価システム。現在ではさまざまな機能を備えたシステムが提供されており、「どれを選べばよいかわからない」という声も聞かれます。ここでは、人事評価システムを選定する際にチェックしておきたい比較ポイントや導入時の注意点を紹介します。
人事評価システムを比較選定する際のポイント
人事評価システムのスペックや使い勝手は、サービスによって異なります。多種多様な選択肢から自社に適したものを見極めるには、以下のポイントに沿って比較検討することをおすすめします。
- 導入形態をどうするか
- 組織の規模に合っているか
- 自社の評価制度に合った仕様か
- セキュリティは安心できるか
- 他のシステムとの連携性はどうか
各項目を詳しく見ていきます。
導入形態をどうするか
現在主流の人事評価システムは、インターネットを介してサービスを利用するクラウド型ですが、選択肢としてパッケージソフト型・オンプレミス型もあります。それぞれの特徴を確認し、自社に合った導入形態のものを選択しましょう。
クラウド型 |
・導入費用が安い ・短期間で導入できる ・ネット環境であれば端末・場所を選ばず使用可能 ・カスタマイズ性は低い |
パッケージソフト型 |
・ソフトを購入してパソコンにインストール ・導入・運用費用は比較的安い ・インストールした端末でしか使用できない ・バージョンアップなどの対応が必要 |
オンプレミス型 |
・自社サーバーにシステムをインストール ・導入コストが高い ・導入に時間がかかる ・カスタマイズ性・安全性が高い |
組織の規模に合っているか
人事評価システムには、中小企業に適した仕様のものや、従業員数に応じてプランが選べるタイプなどがあります。組織の規模にマッチしないシステムを選ぶと、導入効果を感じにくい場合があるため注意しましょう。従業員規模によって料金も変動するため、合わせて料金体系もチェックしてください。
自社の評価制度に合った仕様か
従業員の評価制度は企業によって異なるため、人事評価システムを選定する際は、自社の評価方法を再現できる仕様かチェックしましょう。例えば、コンピテンシー評価を重視しているのに、選んだシステムが目標達成度にしか対応していない場合、自社の評価制度を運用しづらくなってしまうので注意してください。
セキュリティは安心できるか
人事評価システムでは従業員の個人情報や会社の機密情報を取り扱うため、セキュリティ対策については十分に確認する必要があります。アクセス権限の設定や通信の暗号化処理、プライバシーマーク取得などの適切な安全対策が施されているものを選びましょう。
他のシステムとの連携性はどうか
人事評価に限らず、人事・人材管理にまつわる業務全般を効率化したい場合は、他のシステムとのデータ連携の可否についてもチェックしておきましょう。連携させたいシステムが給与管理システムなのか勤怠管理システムなのかによって、適したサービスは変わってきます。
課題・ニーズ別に見た人事評価システムの向き・不向きの傾向
どのような人事評価システムが適しているかは、自社が置かれている状況によっても変わってきます。以下に課題・ニーズ別の向き・不向きの傾向をまとめました。
課題・ニーズ |
向き・不向きの傾向 |
---|---|
低コストでスピーディに導入したい |
初期費用を抑えて簡単に導入できるクラウド型が向いている |
従業員数が多く、マネジメント層や人事部の負担が大きい |
評価プロセスやワークフローを効率的に管理できるシステムがおすすめ |
導入前の従業員情報や評価データも活用したい |
紙やExcelのデータをシステムに移行できるシステムが便利 |
仕事の質・量や行動面について細かく評価したい |
コンピテンシー評価に対応したシステムが適している |
個人目標と組織目標を連動させたい |
MBO評価(目標管理制度)に対応したシステムが適している |
人事評価の客観性を高めたい/従業員を多面的に評価したい |
360度評価に対応したシステムがおすすめ |
社員のモチベーションやキャリア志向を把握したい/組織力強化に活かしたい |
アンケート調査やデータ分析機能を備えたもの、メンタルヘルスに対応するものがおすすめ。異動シミュレーター機能があれば、異動による影響を分析できる |
別チームの仕事を兼務している人がいる/イレギュラーな時期に異動することがある |
異なる部署・チームの評価体制を反映できるシステムが便利 |
使いこなせるか心配 |
無料のデモ版やトライアル期間があるものがよい |
予算が少ない |
最低限の機能が搭載された低価格なシステムが向いている |
人事評価システムの導入時に注意すべき点
人事評価システムを導入する際は、次の2点に留意しましょう。
費用対効果を検討する
人事評価システムを導入すれば、評価プロセスの工数削減・業務効率化にともなうコスト削減が期待できます。しかし、従業員数が少ないスタートアップ企業や小規模事業者の場合、導入・運用コストが効果を上回るケースがあります。導入前にイニシャルコストとランニングコストを算出し、費用対効果を見極めておきましょう。
従業員への説明・レクチャーが必要
人事評価業務を突然システム化すると、現場が混乱して効率が悪くなる場合があります。直感的に扱えるわかりやすい仕様のものでも、最初は画面の見方や操作への慣れが必要です。人事評価システムは余裕のあるスケジュールで導入し、システムの仕組みや操作手順について従業員に説明・レクチャーする機会を設けましょう。
人事評価制度を最適化するために
人事評価システムを比較検討する際は、まずクラウド型・パッケージソフト型・オンプレミス型のなかから適した導入形態を決めましょう。次いで、従業員規模や自社の評価制度に対応しているか、セキュリティ対策や他システムとの連携性がどうかをチェックすれば選択肢を絞り込めます。最適な人事評価システムを採用し、質の高い評価体制を構築しましょう。
この記事の監修者

杜美樹
出版社に18年勤務。編集長、メディア設計、営業統括、システム開発PMと畑違いの職務で管理職を経験。現在は数々のメディアで企画・編集・執筆を手掛ける。得意領域は、実践も積んでいるメディア企画系、人事・マネジメント系、ビジネス系、医療・美容系。インタビュー経験は200件以上。Webライティングの講師も務める。