企業等の業務システムやWebサービスの設計・開発を請け負うSIer。システム開発にまつわる高度な専門知識・ノウハウを有し、開発業務を一括して委託することができます。本記事では、SIerのサービス内容やメリット、利用する流れを説明します。
SIerの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
SIer 12選|比較・選定ポイントとおすすめ「システム開発会社」の特徴
SIerとは
SIerとは、企業などから依頼を受けてシステムの企画・開発・運用・保守などを一括して請け負う事業者のことです。「システムインテグレーター(System Integrator)」を略した和製英語で、読み方は「エスアイアー/エスアイヤー」です。
SIerはネットワークやハードウェア・ソフトウェアなどを組み合わせて一からシステムを構築し、顧客の業務課題を解決に導きます。
SIerは会社の成り立ちや特徴によって、大きく次の4種類に分けることができます。
- メーカー系
- ユーザー系
- 独立系
- 外資系
それぞれの特徴を以下にまとめました。
メーカー系 |
国内大手コンピューターメーカーのシステム開発部門が独立・分社したSIer。親会社や系列会社の製品を用いて開発を行う 【企業例】日立、NEC、富士通など |
ユーザー系 |
銀行や商社、通信会社などの情報システム部門が独立したSIer。主に親会社で使用するシステムの開発・運用を請け負う 【企業例】野村総合研究所、NTTデータ、伊藤忠テクノソリューションズなど |
独立系 |
親会社をもたずに独自経営でシステム開発を行うSIer。親会社や関連会社の影響を受けず柔軟な開発を行える点が強み 【企業例】大塚商会、日本ユニシス、トランスコスモスなど |
外資系 |
外国企業の資本でグローバル経営を行っているSIer。 【企業例】IBM、日本オラクル、SAPなど |
それぞれに強みが異なるため、自社に合った系統のSIerを選ぶ必要があります。
SIerのサービス内容
SIerの主なサービス内容は以下の4つです。ただし、提供内容は各社異なるため、事前に確認してください。
システム企画・導入コンサルティング
システムには多種多様な種類があるため、自社にノウハウがなければどのようなシステムを開発すべきか判断するのは困難です。
SIerでは、高度なIT知識・ノウハウを有するコンサルタントやシステムエンジニア(SE)が顧客にヒアリングを行って業務プロセスの課題を抽出し、解決策となるシステムを提案します。
SIerが開発を行うシステムの一例を以下に挙げます。
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 受発注管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 会計システム
- 人事管理システム
- POSシステム
- メールシステム
- 予約システム
- Webシステム・アプリ
- ECサイト
要件定義・設計
顧客の課題やニーズに沿ってシステム構築に必要な要件の整理・定義を行い、要件定義書を作成します。要件には以下のものがあります。
- 業務要件(システム化する業務内容、業務処理の手順など)
- システム要件(システム化で実現できること)
- 機能要件(システムに必要な機能)
- 非機能要件(必須ではないがあればいい機能・性能など)
要件定義が終わったら、その内容に沿ってシステムの設計を行います。大まかな機能や処理の流れを決める「基本設計」と細かな処理内容を決める「詳細設計」を行い、開発に必要な仕様書を作成します。
- ハードウェア設計
- データベース設計
- 業務設計
- プログラミング設計
開発・テスト
設計フェーズで作成した仕様書を元に、プログラミング言語やデータベースなどの技術を用いてシステムを開発します。また、プログラミングに不具合がないかをチェックするために各種テストを行います。
- 単体テスト(コードを1行ずつ確認)
- 統合テスト(プログラムを組み合わせて確認)
- 総合テスト(ユーザビリティを確認)
- 運用テスト(性能を検証)
運用・保守
構築したシステムが正常に機能しているかを管理し、必要に応じて保守作業を行います。不具合・エラー発生時の対応マニュアルの作成や、セキュリティの管理、バックアップ、改修作業などが含まれます。
SIerに依頼するメリット
主に3つのメリット・効果が期待できます。
必要なシステムを一から構築できる
業務プロセスの課題は企業によって異なるため、既存のパッケージソフトやクラウドサービスでは対応しきれないことがあります。SIerを利用すれば、自社にノウハウやリソースがなくても、自社の課題やニーズに合わせて業務プロセスの改善につながるシステムを一から構築することが可能です。
システム人材の採用・育成が不要
システム開発には、ソフトウェアやプログラミングについて高度な専門知識を有する人材が必要です。SIerにはシステム開発に必要な知識・ノウハウがあるエンジニアやプログラマーが専任担当として自社案件に従事するため、自社でシステム担当者を採用・育成する必要がありません。
効率的に運用できる
システムは開発して終わりではなく、導入後も保守・メンテナンスやトラブル処理などを行う必要があります。SIerを活用すれば、システムの運用・保守などのアフターフォローも委託することができ、自社のリソースを割くことなく効率的に運用できます。
SIerを利用する流れ
SIerで行われるシステム開発の手法は大きく2タイプあります。
- ウォーターフォール型:事前に決めた工程に沿って順に開発する手法
- アジャイル型:スピード重視で実装と修正をくり返しながら進める手法
ここでは、ウォーターフォール型について説明します。
相談
まず、SIerのホームページにあるメールフォームや電話で、システム化したい業務内容や課題について相談します。後日、担当コンサルタントやSEから詳細のヒアリングが行われるので、自社の要望や予算をまとめておきましょう。
提案内容・見積書の確認
相談内容をもとに、SIerからシステムの提案書と見積書が提示されます。自社の要望や納期、予算を満たしているかを確認し、疑問点などがある場合はこの段階で確認しておきましょう。納得した場合は正式に発注し、契約書を締結します。
要件定義からシステム開発
発注内容に沿って、SIerは以下の流れでシステム開発を進めます。
- 要件定義
- 設計
- 開発・プログラミング
- 各種テスト
納品・アフターフォロー
運用テストで問題がなければ納品となります。システム稼働後は、SIerが必要に応じて運用・保守などの対応を行います。導入支援や自社担当者の教育をサポートしてくれるところもあります。
システム開発はSIerに委託しよう
システム開発は工程が多く、高度な知識やノウハウを要するため内製はハードルが高いといえます。SIerを活用すれば、自社にリソースやノウハウが不足している場合でも、課題やニーズに合わせて独自システムを企画・構築することができます。
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