IP電話とは、インターネット回線を使って音声通話する電話のことです。アナログ固定電話にはない機能性や利便性がある反面、種類や利用方法の多彩さから全体像をつかみにくいサービスといえます。ここでは、IP電話のサービス内容と活用のメリット、利用時の流れを解説します。

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IP電話 1選|比較・選定ポイントとおすすめ「IP電話アプリ」の特徴

IP電話とは

IP電話とは、インターネット回線を介した音声通話ができる電話サービスです。アナログ固定電話は音声を電気信号に変えて通話しますが、IP電話では電気信号化した音声をさらにIPパケット(デジタルデータ)に変換して通話します。

 

IP電話はインターネット回線を使う電話サービスの総称であり、光電話やIP電話アプリもIP電話に含まれます。光電話は通信インフラを持つ回線事業者(NTT、SoftBankなど)が提供するサービス、IP電話アプリはモバイル端末やPCで使う通話用アプリケーションです。

 

SkypeやLINEなどのIP電話アプリをイメージするとわかるように、IP電話は専用の電話機がなくても利用できます。また、メタル回線のような電話専用インフラを必要としないこともIP電話の特徴です。これらの特徴を持つIP電話は利便性が高く、アナログ固定電話に替わる電話サービスとして普及が進んでいます。

IP電話の種類

IP電話の種類

サービスの種類

IP電話に該当するサービスには、次の3種類があげられます。

 

  • 光電話
  • IP電話アプリ
  • IP電話(狭義)

 

光電話はインターネット回線を使った電話サービスのことです。IP電話アプリとは、インターネット回線を利用して音声通話ができるようにしているアプリのことです。狭義のIP電話とは、プロバイダやソフトウェア会社などが提供するIP電話サービス(光電話以外のサービス全般)を指します。

回線の種類

IP電話に用いられる回線には、以下の4種類があります。

 

  • ADSL
  • 光回線
  • モバイル回線
  • CATV

 

メタル回線を使うADSLはIP電話の回線として最も古く、通信速度や接続安定性が低いため、通話品質に難を感じる場合があります。これに対して、光回線の通信は高速かつ安定しており、IP電話を利用すれば高品質な通話ができます。

 

モバイル回線は主にIP電話アプリで利用する回線です。CATV(ケーブルテレビ)は基本的に個人向けのサービスであるため、業務利用されるケースは少ないと考えてよいでしょう。なお、ADSLの提供は、2023年1月31日より順次終了する予定となっています。

電話番号の種類

IP電話で使用する主な電話番号には、次の2種類があります。

 

  • 0A0型
  • 0AB-J型

 

0A0型は0からはじまる11桁の電話番号です。IP電話に割り当てられる0A0型番号は、頭の3桁が050になります。0A0型の番号は取得が容易な反面、プロバイダ間で番号を引き継げない、緊急通報ができないといったデメリットがあります。

 

0AB-J型は、市外局番から始まる10桁の電話番号です。アナログ固定電話では一般的な番号であり、IP電話では通話品質が一定基準を満たすサービスでのみ利用できます。なお、一部のIP電話アプリ同士では、電話番号なしでの通話ができます。

電話機の種類

IP電話の通話に使う電話機には次の3種類があげられます。

 

  • ビジネスフォン
  • PC
  • スマートフォン

 

近年のビジネスフォンの多くはIP電話に対応しています。PCおよびスマートフォン(以下、スマホ)は、IP電話アプリのほか、ソフトフォンやクラウドPBXの電話機として利用できます。

 

ソフトフォンはPCをIP電話機化するソフトウェア、クラウドPBXはPBX(構内交換機)のクラウドサービス版です。クラウドPBXにはソフトフォンを兼ねるものが多く、1つのサービスで100台以上のPC・スマホをIP電話機化できます。

IP電話のサービス内容

IP電話のサービス内容は以下の通りです。

電話番号を発行

IP電話の契約時には、電話番号の発行を受けられます。また、一部のサービス(主に光電話)では、既存の固定電話番号を引き継いで利用することが可能です。

 

  • 契約時に0A0型の電話番号を発行
  • 電話番号の変更や追加が可能
  • LNPによる固定電話番号の引き継ぎが可能(0AB-J型対応サービスのみ)

安価な通話サービスを提供

IP電話はアナログ固定電話より安価に利用できます。また、アナログ固定電話と異なり、遠方の相手と通話しても通話料が変わりません(光電話の一部料金プランを除く)。以下はIP電話の通話料金の例です(サービスにより通話料は変わります)。

 

  • アナログ固定電話への国内通話:8.8円/3分
  • 携帯電話への国内通話:17.6円/1分
  • 同一・提携IP電話への通話:無料
  • アメリカへの国際通話:9円/1分

ビジネス向け機能

一部のIP電話はクラウドPBXと一体で提供されており、下記のような機能を利用できます。一般的なIP電話とクラウドPBXの併用でも同様の機能を利用可能です。

 

  • 100台以上の電話端末をクラウドで管理
  • スマホを内線電話化
  • 拠点間を内線接続
  • SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)などの外部ツールと連携

IP電話を活用するメリット

IP電話を活用するメリット

 

IP電話の導入により、次のメリットが期待できます。

通信費・電話関連コストを削減できる

アナログ固定電話をIP電話に切り替えることにより、業務で発生する通信費を削減できます。IP電話の通話料は安価な上に、距離による割増がありません。

 

また、IP電話とPBXクラウドを併用すれば、スマホを内線電話化して、社外にいる社員と社内との通話料を無料にできます。さらには、内線接続による拠点間通話の無料化も可能と、IP電話とPBXクラウドの併用で得られるメリットは多大です。

 

このほか、メタル回線の契約が不要になることもIP電話の利点です。メタル回線を廃止できれば、回線の維持費が不要になる上にオフィスの移転やレイアウト変更を行う際の工事費が大幅に削減されます。以上のIP電話の利点を活かせば、電話に関連するコストを大きく節約できるでしょう。

社員の所有端末を業務に活用できる

IP電話の活用により、社員が所有するスマホやPCから内線番号または0A0型番号での発着信を行えるようになります。これにより、BYOD(個人所有の端末の業務利用)の安全な導入が可能となるほか、テレワーク時の電話環境も容易に整えられます。

 

IP電話とPBXクラウドを自社に導入すれば、クラウド上の電話帳も利用可能となります。結果的に個人の電話番号の利用や端末への情報保存が不要となり、社員の所有端末を業務に安全に活用できるようになります。

サービス利用時の流れ

IP電話を利用開始するまでの流れは、サービスごとに大きく異なります。ここでは、光回線とアナログ固定電話を利用中の企業が、IP電話(光電話)に切り替える場合の流れを見ていきます。

 

  1. 申込〜現地調査(電話利用状況や社内設備などを調査)
  2. 転用承諾番号取得(NTTから他社の光回線へ切り替える場合)
  3. 光回線切り替え(同上)
  4. 電話切り替え工事(番号ポータビリティ実施)
  5. 機器設置・ソフトウェアインストールなど
  6. 利用開始

 

上記の流れは一例であり、IP電話アプリやクラウドPBX機能付きのIP電話では、比較的少ない手間で利用開始できるものも多く見られます。申込をした当日に使用できるサービスもあるので、急ぎで利用したい場合は調べてみてください。

IP電話を導入する価値は大

IP電話を導入することにより、ビジネス通話の利便性やコスト面で多くのメリットを得られます。ただし、IP電話は種類が多く利用方法も多彩なため、サービス選定は慎重に行わなければなりません。自社にはどのような機能の電話が必要かを検討した上で、適切なサービスを選定することが肝要です。

 

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