製造業の生産管理をIT化する「生産管理システム」。QCDの最適化に欠かせない、品質管理や工程管理などを効率化する機能が備わります。製造業DXの実現には生産管理システムが欠かせません。ここでは、生産管理システムの機能や導入メリット、システム導入により実現できることを解説します。
生産管理システムの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
生産管理システム 7選|比較・選定ポイントとおすすめ「生産管理ソフト」の特徴
生産管理システムとは
生産管理システム(生産管理ソフト)とは、生産計画の立案、納期管理、原価管理などを効率化し、QCD(品質・コスト・納期)の最適化に貢献するシステムです。
生産管理システムは製造業DXに必須のツールといえます。製造業DXを実現するには、既存システムの老朽化や業務のブラックボックス化、人材不足などの諸問題を解決しなければなりません。生産管理システムは製造におけるプロセスを可視化・効率化し、これらの課題を解決します。
生産管理システムで実現できること
生産管理システムに備わる機能はサービスによって大きく異なります。ここでは、生産管理システムの代表的な機能と実現できることを解説します。
販売管理を効率化
生産管理システムの導入により、受注から出荷までの販売管理を効率化できます。在庫引当や帳票発行などの作業が自動化され、販売処理の手間が軽減されます。
- 受注情報をシステムに入力
- 受注数に応じて自動で在庫引当(見込み生産品)
- 納品書とピッキングリストをシステムで発行
- ハンディターミナルで出荷検品
生産計画立案を効率化
生産管理システムには、生産計画立案を補助する機能が備わります。手間のかかる計画作成を効率化し、作業時間を短縮できます。
- 受注情報や需要予測をシステムに登録
- マスタデータや在庫情報などを参照しながら計画立案できる
- 基準生産計画(MPS)を手動または自動で立案
- 資材所要量計画(MRP)の立案を補助
- 外部の生産スケジューラとの連携も可能
工程・品質管理を効率化
生産管理システムの導入により、生産工程管理と品質管理を効率化できます。作業進捗や検査実績などの一元管理が可能となります。
- 生産予定と作業進捗をシステムで管理
- ハンディターミナルで作業実績を入力
- 品質検査の実績をシステムに記録
- 部門ごとの作業負荷をシステムで管理
- システム上で負荷調整や計画変更を行える
調達管理を効率化
生産管理システムには、原料や資材の調達を管理する機能が備わります。仕入先の管理から発注量の計算まで、システムで効率的に行えます。
- 仕入先情報をシステムで管理
- 過去の仕入れ情報を参照できる
- 生産計画に基づき発注内容と数量を自動計算
- 外注加工の実績管理や発注処理も行える
在庫管理を効率化
生産管理システムには在庫管理機能が備わります。製品や原料などの在庫情報をシステムで効率的に管理できます。
- 複数拠点の在庫を一元管理
- ロットや入荷日などの条件で在庫照会できる
- ハンディターミナルで入出庫管理
- 拠点間の在庫移動をシステム上で計画・管理
- 生産計画と連動した発注点管理が可能
精緻な原価管理によるリスクヘッジ
生産管理システムの原価管理機能を活用することにより、原価を適切に管理し、変動リスクに強い体制を整えられます。
- 標準原価計算と実際原価計算をサポート
- 積み上げ原価計算が可能
- 予実差異をシステムで分析
- 新製品の原価をシミュレーション
- 将来の原価変動をシミュレーション
生産管理システムの導入で得られる効果
生産管理システムの導入により得られる効果・メリットは、次のように整理できます。
業務の標準化による属人化解消
生産管理は属人化しやすい業務です。特にExcelやレガシーシステムで生産管理する企業では、業務のブラックボックス化・属人化が高確率で生じます。属人化した状態を放置すれば、担当者の退職により業務が回らない状況に陥りかねません。
生産管理システムを導入すれば、個人のスキルに頼らない業務体制が整い、属人化解消につながります。生産計画立案や原価計算などが簡易化され、経験の浅い従業員でも管理業務に携われるようになります。
情報集約による意思決定スピード向上
製造業の経営判断を素早く下すには、製品の生産状況や在庫、原価などの情報を経営層がリアルタイムで把握できなければなりません。しかし、業務別の専門システムやExcelで生産管理を行う環境では、部門間での情報の分断により、データ収集に時間がかかりがちです。
生産管理システムの導入により、生産品に関するデータの一元管理が可能となります。経営判断に必要な情報をリアルタイムで確認できるため、素早い経営判断が可能となります。
厳密な生産管理によるコスト削減
生産コストを削減するには、原価や在庫などのデータを自在に収集できる体制が必要です。しかし、各部門が独自にデータを保管している環境では、情報収集に手間がかかるうえ、Excelで情報を取りまとめる場合は転記ミスのリスクも生じます。
生産管理システムを利用すれば、データの一元管理により、原価率の改善や在庫の適正化といったコスト削減施策を実施できます。たとえば、作業効率の悪い製品ラインや労務費の偏り、回転率の悪い在庫などを発見し、コスト削減につながる施策を打つことができます。
生産管理システムの機能一覧
生産管理システムの機能をまとめました。ただし、各社で備わっている機能は異なるため、事前に確認してください。
機能 |
特徴 |
---|---|
マスタ管理機能 |
・品番マスタを登録 ・部品構成マスタを登録 ・単価マスタを登録 ・設備マスタを登録 ・取引先マスタを登録 ・発注先マスタを登録 ・各種マスタデータを照会 ※登録できるマスタデータはシステムにより異なる |
販売管理機能 |
・見積を作成 ・受注情報を入力 ・在庫確認と引当を実施 ・出荷予定を作成 ・納品書を発行 ・ピッキングリストを発行 ・ハンディターミナルで出荷入力 ・売上を確定 ・入金を管理 ・領収書を発行 |
生産計画機能 |
・情報表示や自動計算などで計画立案を補助 ・受注生産計画を入力 ・基準生産計画を入力 ・資材所要量計画を入力 ・作業指示書を発行 ・作業手配を照会 ・作業手配を変更 ・生産スケジューラとの連携が可能 ・各種計画のシミュレーションが可能 |
原価管理機能 |
・原価計算をサポート ・標準原価を計算 ・実際原価を計算 ・新製品の原価を試算 ・費用配賦ルートを設定 ・原価変動をシミュレーション |
工程・品質管理機能 |
・ハンディターミナルによる実績入力(POP入力)が可能 ・作業実績を入力 ・品質検査実績を入力 ・作業進捗を照会 ・担当者別に作業時間を照会 ・部門別に作業負荷率を算出 ・グラフィカルな表示で作業負荷を把握 ・システム上で作業日程を調整できる |
調達管理機能 |
・発注先マスタを照会 ・過去の仕入情報を照会 ・発注情報を入力 ・注文書を発行 ・仕入品を検品 ・受入情報を入力 ・支払情報を管理 |
在庫管理機能 |
・製品在庫を管理 ・原料在庫を管理 ・仕掛在庫を管理 ・品番別に在庫照会 ・ロケーション別に在庫照会 ・ハンディターミナルで入出庫登録 ・ハンディターミナルで棚卸 ・拠点間の在庫移動を管理 ・在庫推移を照会 ・入出庫履歴を照会 |
連携機能 |
・会計システムと連携 ・生産スケジューラと連携 ・EDIと連携 ・RPAと連携 |
生産管理システムを導入する価値は大
属人化解消やコスト削減、経営判断スピード向上など、生産管理システムは多数の導入メリットを持ちます。ただし、生産管理システムは導入が難しいサービスでもあります。自社の課題を明確化した上で実用的なサービスを選び、慎重に導入を進めることが肝要です。
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