入荷から配送まで一連の物流業務を効率化する「物流管理システム」。WMSとTMSの2種類があり、自社に合うものを導入することにより、物流現場の改善や経営課題の解決を実現できます。ここでは、自社に適する物流管理システムを選ぶための比較方法と選定ポイント、導入時の注意点を解説します。
物流管理システムを比較選定する際のポイント
物流管理システムを選定する際のチェックポイントは、以下の4つです。
ツールのタイプを決める
物流管理システムには、倉庫管理システム(WMS)と配送管理システム(TMS)の大きく2つの機能があり、システムによって搭載されている機能が異なります。
倉庫の作業効率や在庫管理を改善したい場合は倉庫管理システムの機能を備えたもの、商品配送を効率化したい場合は配送管理システムの機能、双方の機能が必要な場合は総合型が適しています。
導入方式を決定する
物流管理システムの導入方式には、オンプレミス型とクラウド型があります。それぞれの特徴を押さえた上で、自社で利用する導入方式を決めましょう。
- オンプレミス型
自社サーバーにシステムを組む導入方式です。カスタマイズ性が高く、自社の業務に合わせたシステムを構築できます。ただし、導入時のコストが高額な上に、保守管理に費用と技術を要します。 - クラウド型
Web上のサービスを利用する導入方式です。自社でのシステム構築が不要なため、初期費用を安く抑えられます。ただし、インターネット回線を使う方式のため、オフライン環境では利用できません。
なお、近年の配送管理システムは、スマートフォンやタブレットでドライバーを管理できるクラウド型が主流となっています。
機能を比較する
物流管理システムの導入を成功させるには、機能に過不足のないサービスを選ぶことが肝要です。次のポイントを参考にして、機能比較を行いましょう。
<倉庫管理(WMS)>
- 基本機能は充実しているか
- 検品や棚卸に使えるハンディ端末の種類は何か
- 社外での在庫照会は可能か(営業・テレワークなどに活用できるか)
- 自社商品に合った在庫管理ができるか(期限管理・ロット管理は可能か)
- 不足する機能をカスタマイズで補えるか
<配送管理(TMS)>
- メイン機能は何か(配車管理・動態管理・運賃管理など)
- 配車計画や配送ルートの自動作成は可能か
- 配送状況をリアルタイムで確認できるか
- ドライバーを補助する機能は充実しているか
とくに、配送管理システムの機能はサービスにより大きく異なります。自社の課題を明確にした上で、課題解決に役立つ機能が備わるサービスを選定しましょう。
コストを比較する
物流管理システムの利用にかかるコストは、システムの種類や導入方式などにより大きく変わります。導入候補とするサービスの価格や月額料金を比較して、無理なく継続利用できるシステムを選定しましょう。
オンプレミス型の倉庫管理システムの相場価格は、パッケージタイプで300〜500万円前後、オーダーメイドタイプで数百万〜1千万以上です。クラウド型の倉庫管理システムは、おおむね40〜50万円前後の初期費用と、8万円前後の月額料金を要します(基本プランの相場費用)。
クラウド型の配送管理システムの料金は、拠点数や車両台数、動態管理用端末の種類などにより変わります。具体的な料金は公開されていない場合が多いため、コストを比較する際は、問い合わせや資料請求を活用してください。
課題・ニーズ別に見た物流管理システムの向き・不向きの傾向
自社の課題や要望によって、導入に適する物流管理システムのタイプは異なります。次の表を参考にして、自社にはどのようなタイプのシステムが向くのか検討してください。
課題・要望 |
向き・不向きの傾向 |
---|---|
導入コストをなるべく抑えたい |
・クラウド型システムであれば導入コストを抑えられる。ただし、ランニングコストがかかる点を踏まえて選定することが大切。 ・比較的安価なPC用ソフトも提供されている。ただし、機能が限定されているケースが多い。 ・スマートフォンで動態管理するクラウド型のTMSは手持ちのスマホを活用できるため費用を抑えやすい ・専用デバイスのレンタル・購入が必要なシステムは、導入コストが膨らむ場合があるので注意が必要。 |
複数拠点を手軽に管理したい / 多拠点間で情報共有したい |
・クラウド型システムはインターネット環境のある複数拠点に導入できる ・オンプレミス型はVPNによる多拠点管理は可能だが、開発費用を要する |
人件費を削減したい / 長時間労働をなくしたい |
・WMS:リングスキャナ対応のシステムなど、作業効率をアップする機能が充実しているものが望ましい ・TMS:日報作成を自動化できるなどドライバー補助機能が充実したシステムが適している ・配送ルート作成機能に優れるシステムであれば、配送ルートの最適化により運行時間を短縮できる |
物流管理システムの導入時に注意すべき点
物流管理システムを導入する際は、次の2点に留意しましょう。
試用期間を有効活用する
物流管理システム導入の是非は、サービスを試用した上で決定するのがおすすめです。作業工程が大幅に変更になるため、導入後に従業員から不満が出たり、利用を拒否されたり、想定外の混乱が起きる可能性があるためです。デモ版や試用期間で使い勝手を試し、自社に役立つと判断してから契約を結ぶとよいでしょう。
とくに配送管理システムは試用で効果を確かめやすいサービスといえます。正確で効率的な配車を行えるか、配送時間を短縮できるかといった点を確認した上で、導入を決めるとよいでしょう。
社内調整をしっかり行う
倉庫管理システムの導入失敗を招く要因に、現場作業に対する部門間の認識のズレがあげられます。経営層やシステム部門の独断でシステムの要件定義を進めると、納品されたシステムが現場に合わず、導入失敗となる可能性があります。
業務改善を目指す倉庫管理システムの導入は、確実に成功させたいところです。現場担当者と経営層を交えた、念入りな調整が肝要です。
物流管理システムの導入計画を進めよう
物流管理システムには、倉庫管理と配送管理の大きく2種類の機能があります。サービス導入によって何を改善したいのか、目的を明確化した上で選定を進める必要があります。自社の物流業務の問題点を洗い出し、課題解決に役立つ機能が備わるシステムを選定しましょう。サービス導入フェーズでは、試用による効果検証や、要件定義の打ち合わせに力を入れることが肝要です。以上を踏まえて、具体的なサービス選定へ進んでください。