会議資料の電子化を通じて、企業にさまざまなメリットをもたらしてくれるペーパーレス会議(ペーパーレス会議システム)。テレワークの充実化にも役立つ有益なツールですが、導入時は自社に適したサービス選定を行う必要があります。ここでは、ペーパーレス会議の比較方法や選定ポイント、導入時の注意点を解説します。
ペーパーレス会議を比較選定する際のポイント
ペーパーレス会議の比較選定ポイントを4項目に分けて解説します。各ポイントを参考にして、自社のニーズに適するサービスを選び出してください。
ニーズに適した導入方式を選ぶ
ペーパーレス会議の主な導入方式には、オンプレミス型とクラウド型があります。両者のメリット・デメリットを押さえたうえで、自社のニーズにマッチする導入方式を選定しましょう。
●オンプレミス型
自社サーバーにソフトウェアをインストールして、社内ネットワークやVPN接続でシステムを運用する導入方式です。セキュリティ性の高さがオンプレミス型のメリットであり、機密性の高い重役会議でも安心して利用できます。デメリットはコストの高さで、初期費用が高額なほか、システムの保守にも費用が必要です。
ただし、オンプレミス型であっても、ソフトウェアをレンタルするサブスクリプション版や、会議室に小規模なシステムを持ち込むスタンドアローン版であれば、費用を抑えて運用できます。
●クラウド型
インターネット上のシステムを利用する導入方式です。自社でサーバーを用意せずに導入できるため、初期費用が安く済み、保守費用も生じません。また、インターネットにつながる環境であれば利用できることから、クラウド型のペーパーレス会議はテレワークに適します。比較的手軽に導入でき、利便性も高いクラウド型ですが、社外に情報を預けなければならない点はデメリットとして押さえておきましょう。
対応デバイスをチェックする
ペーパーレス会議の動作環境はシステムごとに異なります。各サービスの対応デバイスや対応OSの種類をチェックして、自社で利用しやすいシステムを選定しましょう。
オンプレミス型ペーパーレス会議では、サーバーにWindows Serverを用い、クライアント端末にはWindows 10搭載PCやiPadを使用するシステムが多く、Android端末を使用するシステムは少数派です。
クラウド型ペーパーレス会議には、Google ChromeやInternet Explorerなどのウェブブラウザを利用するタイプと、専用アプリを利用するタイプとがあります。専用アプリ型の場合、クライアント端末と管理用端末の動作環境が異なるシステムもあるので、仕様を入念にチェックしてください。
機能を比較する
ペーパーレス会議の利便性は、システムに備わる機能により大きく変わります。次の5点を参考に、各システムの機能を比較してください。
- 対応ファイル形式(閲覧できるファイル形式)は充実しているか
- 資料のアップロードや管理は簡単に行えるか
- 閲覧機能(画面同期・2画面表示・投票機能など)は充実しているか
- 閲覧権限や閲覧期限などを柔軟に設定できるか
- セキュリティ機能(IPアドレス制限、操作ログ閲覧機能など)は充実しているか
上記のほか、実際の利用シーンを想定した機能の比較も行いましょう。テレワークにペーパーレス会議を活用するなら、Web会議システムとの連携機能があると便利です。オンライン商談に活用するなら、ゲスト参加機能を比較するとよいでしょう。実際の利用シーンを想定することで、より自社にとって使い勝手のよいシステムを選択できます。
コストを比較する
オンプレミス型システムの場合は、会議の規模に応じてシステム構成が大きく変わるため、初期費用や保守費用についてはベンダーに問い合わせる必要があります。導入コストの相場は、小規模なシステムで数十万円、大規模システムで数百万円以上になっています。
クラウド型ペーパーレス会議の初期費用は無料〜10万円程度で、料金体系はライセンス単位の月額制または年額制が主流です。1IDあたりのライセンス費用は月額にして1,000〜3,000円程度が相場で、サービスによっては月々1,000円前後のディスク費用が別途請求されます。このように各種費用にバラつきがあるため、クラウド型ペーパーレス会議のコスト比較は年単位の出費を試算したうえで行うことが肝要です。
課題・ニーズから見たペーパーレス会議の向き・不向きの傾向
ペーパーレス会議の選定は、自社の課題や要望を踏まえて行うことが肝要です。次の表を参考にして、自社に適するシステムのタイプを選んでください。
課題・要望 |
向き・不向きの傾向 |
---|---|
社内での会議からテレワーク、オンライン商談まで柔軟に活用したい |
・クラウド型システムはインターネット環境があればどこでも利用できるため、柔軟性の高い運用を実現しやすい ・オンプレミス型は接続のセキュリティが保てる反面、ゲスト参加が容易にできない場合があるので注意が必要 |
スモールスタートしたい / 初期費用を安く抑えたい |
・クラウド型サービスはライセンス数で料金を調整できるため小さく始めたいときに便利 ・スタンドアローン版のオンプレミス型システムでもスモールスタートが可能だが、利用が社内に限定される点に注意 |
自社のセキュリティ要件が厳しい / 社外に会議資料を持ち出せない |
・オンプレミス型システムは自社のセキュリティポリシーに対応しやすい ・クラウド型でもセキュリティを強化しているタイプがあるのでチェックするとよい |
導入時に注意すべき点
急速にペーパーレス化を推進しようとすると、社員の混乱や反発を招いてしまう可能性がある点に注意が必要です。部門ごとの導入やノウハウのインプット期間などを踏まえて段階的な導入を行うなど、計画的に移行するのがスムーズな運営のポイントです。
まずは社内報やセミナーなどで、ペーパーレス会議の導入メリットを社員に説明しましょう。ペーパーレス化についての勉強会も開催して、社員がシステム導入に対して感じる心理的なハードルを下げるのも良い方法です。サービス導入フェーズでは、電子資料の取り扱いについてのルール作りを行うことも必要です。
ペーパーレス会議の導入に乗り出そう
ペーパーレス会議の導入を成功させるには、ツールの利用シーンを想定したうえで、サービス比較を行うことが肝要です。まず利用方法に適する導入方式を決めて、機能や価格を比較することにより、自社にマッチするペーパーレス会議を選び出せます。サービス導入フェーズでは、慎重な導入計画を立ててください。多少時間がかかっても、まず社員の理解を得てから段階的にペーパーレス化を進めましょう。