システムやソフトウェアの開発業務を海外の開発会社や子会社に委託する「オフショア開発」。日本より人件費が安く、優秀なIT人材を確保しやすいことから、高い費用対効果が期待できます。ここでは、オフショア開発のサービス内容と活用のメリット、利用する際の流れを説明します。
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オフショア開発会社5選|比較・選定ポイントとおすすめ「オフショア開発企業」の特徴や活用事例
オフショア開発とは
オフショア開発とは、人件費が安い海外の開発会社や子会社にシステム・ソフトウェア・アプリなどの開発業務やシステムの運用・保守を委託する手法です。
日本でオフショア開発が注目されるようになった背景には、慢性的なIT人材不足と、それにともなう人件費の高騰があります。新興国であれば先進国より人件費を数分の一程度に抑えることができるため、現在では多くの企業がオフショア開発を活用しています。
日本企業に人気のオフショア開発先(拠点)としては、アジア圏でとくにIT人材が豊富な以下の国が挙げられます。
- 中国
- インド
- ベトナム
- フィリピン
- ミャンマー
プログラミング言語は世界共通なので、ほかのビジネスと比べて海外の人材を登用しやすいという点も、オフショア開発の活況を後押ししています。
また、現地と日本とのコミュニケーションを円滑化する橋渡し役として、ITスキルにくわえて日本語も堪能な「ブリッジSE」を配置するケースが多いこともオフショア開発の特徴です。
オフショア開発の契約の種類
オフショア開発の契約形態には、「受託型」と「ラボ型」の2タイプがあります。サービスの提供形態がそれぞれ異なるため、特徴を押さえておきましょう。
受託型
受託型のオフショア開発(受託開発)は、案件ごとに顧客の要望に沿って設計・開発をし、納期までに納品する方法です。受託内容は案件によって異なりますが、システムの要件定義から設計・開発・テストまで一貫して請け負うことが可能です。オフショア開発先は、決められた納期までに成果物を納品する責任を負います。
受託開発には以下のような案件が適しています。
- 納期が決まっている
- 納期が短い
- 仕様変更が少ない
- 上流工程から依頼したい
ラボ型
ラボ型のオフショア開発(ラボ型開発)は、一定期間(一般に半年から数年)、現地エンジニアを自社の専属チームメンバーとして確保し、プロジェクトを担当してもらう方法です。契約期間中は自由にメンバーを管理できるため、仕様変更や機能追加にも柔軟に対応できます。
ラボ型開発は以下のようなケースに適しています。
- 継続的に開発案件や保守業務が発生する
- 仕様を柔軟に変更しながら開発を進めたい
- 納期が決まっていない
オフショア開発のサービス内容
オフショア開発では以下のようなサービスを提供しています。
システムやソフトウェアの開発
オフショア開発の主なサービスは、情報システムやWebサービスの開発です。日本におけるシステム開発と同様に、さまざまな開発言語・プラットフォームを用いて顧客の要望に沿ったシステムを構築します。具体的には以下のような開発業務を行います。
- 業務システムの開発
- ソフトウェア開発
- アプリケーション開発
- ゲーム開発
- AIやIoTの先進技術を用いたシステム開発
システムの運用・保守
システムの運用・保守もオフショア開発のニーズが高い業務です。新規システムの開発から運用・保守まで一括して委託するほか、既存システムの運用・保守のみ依頼することもできます。運用・保守の主なサービス内容は以下の通りです。
- システム監視・稼働管理
- バックアップ管理
- バージョンアップ・機能追加
- サーバー・ネットワーク性能管理
- システム移行(マイグレーション)
- セキュリティ管理
データ入力・画像加工
システム開発以外のBPO(Business Process Outsourcing)サービスに対応している企業もあります。多くの場合、膨大な処理量にも対応可能です。
- データ入力(申込書・アンケートなど)
- データプロセッシング(データ照合・抽出・マージなど)
- 紙の文字情報をスキャンしてデータ化
- 画像処理・レタッチ
- HTMLコーディング
オフショア開発を活用するメリット
オフショア開発を利用するメリットは、以下の3点です。
人件費を抑えて高スキルの人材を確保
システム開発の費用の大部分は人件費なので、人件費が高い日本で開発を行うと開発費全体が膨れ上がる傾向にあります。オフショア開発先の人件費は日本の数分の一程度となるため、開発費を大幅に削減することが可能です。
また、オフショア開発先には先進的なIT教育を受けた優秀なエンジニアが豊富にいます。日本企業が求める品質レベルにも対応可能な、技術力が高い人材を安定的に確保できるという点も大きなメリットです。
開発スピードの向上が期待できる
人件費が安ければ、日本より多くのエンジニアやプログラマーを確保できます。同時に稼働する人数が増えれば、開発作業をスピーディーに進めることができ、日本で開発するより納期を短縮できる可能性があります。
緊急時の国内拠点のバックアップ対応
災害や感染症の流行などによって日本国内の拠点が稼働できなくなった場合でも、海外に拠点があれば業務上のリスクを軽減させることが可能です。
オフショア開発の実施の流れ
オフショア開発を利用する場合の一般的な方法は、オフショア開発を行っている国内のシステム開発会社に依頼するというやり方です。ここでは、基本的なサービス利用の流れを整理しました。
問い合わせ・相談
まず、依頼したい業務の内容について相談します。「オフショア開発に適した内容か」「オフショア先で対応可能か」をしっかりと確認しましょう。オフショア開発企業からは現地スタッフや人件費、開発体制についての説明があるので、自社の案件にマッチするかチェックしてください。
言語や文化の違いなどに不安がある場合は、契約から納品まで日本語で対応できるブリッジ人材の有無を確認するとよいでしょう。
見積書の確認
相談内容に基づき、見積書が提示されます。各項目の料金設定の根拠や明細について不明点があれば、この段階でよく確認しておきましょう。
現地スタッフ面談
開発会社にもよりますが、アサイン予定の現地スタッフのWeb面談を実施しているところもあるので、人柄や日本語レベルをチェックしましょう。現地視察やトライアルプロジェクトに対応しているところもあります。
システム開発・サービス実施
契約後は、Webミーティングや定期的な進捗報告を受けながらプロジェクトが進行します。オンライン会議システムなどのWebツールを活用し、現地のプロジェクトマネジャーやブリッジSEと円滑なコミュニケーションを図りましょう。
納品・プロジェクト終了
基本的に、委託型の場合は「納期」、ラボ型の場合は「契約期間の終了」をもって案件が完了します。
オフショア開発を有効活用しよう
ビジネスのシステム化が急速に進む日本において、オフショア開発はIT人材不足を解消する有効な選択肢です。ハイレベルなIT人材を多く輩出する新興国のリソースを活用することで、低コストでも高品質なシステムを開発できるようになります。
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