コンピュータ上で精密な図面を作製できるCADソフト。各種設計図の作製や、製品デザインの制作などを効率化する機能が備わっています。ここでは、CADソフトに備わる機能と導入メリット、ツール導入により実現できることを解説します。
CADソフトの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
CADソフト 1選|比較・選定ポイントとおすすめ「作図ソフト」の特徴
CADソフトとは
CADソフトとは、コンピュータ上での製図を可能とするソフトウェアです。名称のCAD(キャド)はComputer Aided Designの略であり、コンピュータ支援設計を意味します。
CADソフトは1960年代にアメリカで開発されました。手書きと同様の2次元の製図ができるソフトウェア(2D CAD)として誕生し、1970年代には3次元の立体的な製図を行える3D CADが登場しています。
作図ソフトや図面 ソフトとも呼ばれるCADソフトは、設計図の作製を必要とするあらゆる業種に不可欠なツールです。また、リアルな3Dグラフィックを制作できることから、3D CADは製品デザインの現場でも活用されています。
CADソフトで実現できること
CADソフトを活用することで、次のことを実現できます。
図面作製を効率化
CADソフトの活用により、手書きでは手間のかかる図面作製を大幅に効率化できます。また、3次元の図面も直感的操作で作製することが可能です。
- 「線分」「円弧」「ポリライン」などの機能で図形を作成(2D CAD)
- 「押し出し」「スイープ」などの機能で2次元の輪郭を3次元グラフィックに形成(3D CAD)
- 図形の修正や複製、共有が容易
デザイン制作とシミュレーションを効率化
3次元の製図ができる3D CADは、3Dデザインソフトとも呼ばれています。その名の通り、3D CADは製図だけでなくデザイン制作にも活用できるほか、FEA(有限要素解析)による耐久性シミュレーションも行えます。
- レンダリング機能によるリアルな3Dデザイン制作が可能
- 画像操作により、さまざまな角度からデザインを確認できる
- パーツの構造や組み合わせ、分解した状態などをチェックできる
- 製品の応力や熱応力をFEAでシミュレーション
- 素材やサイズによる耐久性の変化を確認できる
業種に特化した機能で設計・製図を効率化
CADソフトを大きく種類分けすると、多様な業種で利用できる汎用CADと、特定業種に特化した専用CADに分かれます。専用CADには建築CADや機械CAD、アパレルCADなどがあり、各業種に役立つ機能が備わっています。
- 建築CAD:意匠図や確認申請図などの作製が可能
- 機械CAD:専用コマンドや部品データを使った機械設計が可能
- アパレルCAD:パターンメーキング、グレーディング、マーキングが可能
CADソフトの導入で得られる効果・メリット
CADソフトの導入による効果・メリットには以下のものがあります。
製図の効率化による生産性向上
CADソフトはものづくりの現場の生産性向上に役立ちます。ツール導入により、図面作製の短時間化や、設計ミスの削減が可能となり、生産性向上につながります。
効率的かつ正確な図面作製ができ、寸法の変更や修正も容易に行えることがCADソフトのメリットです。また、3D CADのシミュレーション機能を使えば、試作品づくりの前に設計ミスをチェックできます。
共同作業を効率化
CADソフトの導入により、ものづくりの現場における共同作業を効率化できます。デジタルの図面は簡単にコピーでき、共有も容易です。クラウドストレージでデータ共有すれば、チームでの図面編集や協力会社との共同設計、営業担当者への情報共有などが効率化されます。また、図面のデジタル化により、設計業務やデザイン制作のリモートワーク化も可能となります。
部品選定とコスト計算を効率化
近年はCADソフトとERPを連携させる企業が増えています。CADソフトのデータは、部品表や技術文書とともにPDMシステム(製品情報管理システム)で管理されることが一般的です。PDMシステムとERP、CADソフトの3つを連携させることにより、設計段階での部品選定やコスト計算が効率化されます。
たとえば、機械装置の製造コストを削減するには、設計段階での原価調整が必要です。ERPで管理する原価情報をCADソフトで確認できるようにすれば、設計時に低コストな部品を素早く選べるようになり、コスト計算や生産体制構築も効率化されます。こうしたシステム連携による業務効率化は、デジタルツールであるCADソフトならではのメリットといえます。
CADソフトの機能一覧
CADソフトに搭載されている主な機能を以下にまとめました。ただし、備わる機能は提供各社で異なるため事前に確認してください。
機能 |
特徴 |
---|---|
2次元図面作製機能 |
・各種ツールで図形を作成 ・ステータスバーの指示に従うだけで作図を進められる ・直線を作成(長さや角度の指定が可能) ・四角形を作成 ・円を作成 ・スプライン機能で曲線を作成 ・直線と曲線の組み合わせで1つのオブジェクトを作成(ポリライン機能) ・線の種類や太さを変えて作図できる ・図面に寸法を記入 ・図面に文字を記入 |
3次元図面作製機能 |
・各種フィーチャー機能で2次元の輪郭を3次元に形成 ・「押し出し」機能で輪郭に厚み情報を追加 ・「回転」機能で輪郭を回転させて立体に形成 ・「スイープ」機能で輪郭を曲線に沿った立体に形成 ・「ロフト」機能で複数の輪郭をつないだ立体を形成 ・「フィレット」機能で立体の角を丸くなめらかな形に成形 ・「面取り」機能で立体の角を斜めにカット ・「コピー」機能で立体やパターンのコピーを作成 ・「スケール変更」機能で立体の大きさを変更 ・「レンダリング」機能で立体に色や質感などの表現を追加 ・FEA機能で応力や熱応力などをシミュレーション ・3次元データから2次元イラストを作成できる ※各種機能の名称はソフトウェアにより異なる |
建築CADの機能 |
・建築基準法に沿った設計が可能 ・「壁」「通り芯」などの建築用コマンドを利用できる ・プレゼンテーション用の高品質CGを作成できる ・実施設計図面の作成が可能 ・法規関連図面の作成が可能 |
機械CADの機能 |
・機械部品設計用のコマンドを利用できる ・あらかじめ登録された機械部品データを設計に利用できる ・作図ツールが機械設計に最適化されている |
アパレルCADの機能 |
・パターンメーキング機能(型紙作成機能) ・グレーディング機能(サイズ展開機能) ・マーキング機能(型入れ機能) |
CADソフトを設計業務に活用しよう
手書きの製図をCADソフトに切り替えれば、図面の作製や共有が大幅に効率化されます。設計ミスの削減や、部品選定の効率化にもCADソフトは役立ちます。ただし、ツールの選定は慎重に行いましょう。機能やコストなどを比較して、自社に最適なCADソフトを選ぶことが肝要です。
CADソフトの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
CADソフト 1選|比較・選定ポイントとおすすめ「作図ソフト」の特徴