煩雑な原価管理を効率化する「原価管理システム」。原価を把握するだけでなく、分析やシミュレーション機能によるコスト削減など、経営に直結するメリットを持ちます。しかし、導入にあたっては自社に適したシステムを選定することが重要です。ここでは、原価管理システムを選ぶための比較方法と選定ポイント、導入時の注意点を解説します。

原価管理システムを比較選定する際のポイント

原価管理システムを比較選定する際のポイント

 

原価管理システムの比較でチェックしておきたいのは、次の5つです。

自社に必要な要件をまとめる

現在は多種多様な原価管理システムが提供されているため、自社に合った原価管理システム(原価管理ソフト)を選ぶには、まずシステムに求める要件を明確化した上で進めることが肝要です。次の点を参考にして、原価管理システムの導入目的と、システムに求める要素をまとめましょう。

 

  • システム導入により改善したい課題は何か
  • 課題解決にはどのような機能が必要か
  • 自社の業種にはどのような原価管理機能が必要か

 

なかには多機能であらゆる課題に対応している製品もありますが、不要な機能が増えると、逆に使いづらさを感じてしまう場合があります。自社にとって実用的な原価管理システムを選定できるように、システムに求める要件を明確に定義しておきましょう。

導入方式を決める

原価管理システムの導入方式には、自社サーバーにソフトウェアをインストールするオンプレミス型と、インターネット上のソフトウェアを利用するクラウド型があります。両者のメリットとデメリットを押さえた上で、自社で利用する導入方式を決定しましょう。

 

  • オンプレミス型
    自社のシステム環境で稼動させる方式のため、高いセキュリティ性を保って運用できます。ただし、導入時にソフトウェア購入やシステム構築が必要なため、クラウド型と比べて初期費用が高額です。また、オンプレミス型はシステムの保守管理を自社で行わなければなりません。
  • クラウド型
    初期費用を安く抑えられ、かつメンテナンスフリーで運用できます。接続の手軽さもクラウド型の魅力です。インターネット環境があれば利用できるため、多拠点からのアクセスや社外からのアクセスを容易に行えます。一方で、クラウド型システムを利用する際は、自社データをベンダーに預けなければなりません。外部に対するセキュリティ対策はベンダー任せになります。

標準機能を比較する

原価管理システムの選定では、標準機能の比較をしっかり行いましょう。自社に必要な機能が標準で備わるシステムを選ぶことにより、カスタマイズの手間と費用を抑えられます。機能比較で重点的にチェックしたいポイントは次のとおりです。

 

  • 自社の業種に適した原価管理は可能か
  • 複数のデータ取得方法に対応しているか
  • 費用配賦機能は充実しているか
  • シミュレーション機能は充実しているか
  • 自社の業務システムと連携できるか

 

上記ポイントを参考に、自社がシステムに求める条件も考慮して、機能の比較を進めましょう。なお、原価管理システムを大きく分類すると、多業種で使える汎用型と業種特化型に分かれます。汎用型の標準機能に不足を感じる場合は、自社の業種に特化したシステムを探してみてください。

カスタマイズ性を比較する

原価管理の方法は企業ごとに大きく異なるため、原価管理システムを導入する際は自社に合わせたカスタマイズが必要となります。導入候補とする原価管理システムを絞り込んだら、自社が求めるカスタマイズに対応しているか確認しましょう。

 

原価管理システムのカスタマイズ性を知るには、ベンダーに問い合わせを行う必要があります。自社に必要なシステムの仕様を具体的にまとめた上で、ベンダーに連絡を取るとスムーズです。システムのコストについても、問い合わせの際に確認しておきましょう。

課題・ニーズ別に見た原価管理システムの向き・不向きの傾向

課題・ニーズ別に見た原価管理システムの向き・不向きの傾向

 

原価管理システムに求める要望や自社の抱える課題によって、選定すべきシステムのタイプが変わります。次の表を参考にして、自社にはどのようなタイプのシステムが向くか検討してください。

 

要望・課題

向き・不向きの傾向

スモールスタートしたい / なるべく低コストで導入したい

・クラウド型システムはライセンス数で料金が決まるためスモールスタートしやすい

特殊な原価管理方法に合うシステムを探している

・業種特化型システムを検討するとよい

・カスタマイズ性に優れるシステムであれば、自社に合った原価管理ができる

・自社専用に設計するフルスクラッチ型システムも視野に入れる。ただし、費用が高額になりやすい点に注意

事業拡大に合わせて拡張しやすいシステムを探している

・クラウド型システムはインターネット環境があれば利用できるため、導入範囲を拡大しやすい

・オンプレミス型も導入範囲の拡大は可能だが、費用が大きくなる点に注意が必要

クラウド型を利用したいがセキュリティ性が気になる

・自社指定のクラウド基盤を利用できるクラウド型システムを検討するとよい

・VPN接続に対応するクラウド型システムも提供されている

導入時に注意すべき点

導入時に注意すべき点

 

原価管理システムの導入は、製造やサービスの現場に携わる従業員の意見を取り入れながら進めましょう。経理部や情報システム部門の独断で導入を進めると、現場の実情に即さないシステムが納品され、導入失敗に終わる可能性があるので要注意です。

 

原価管理システムを実用的なものにするには、現場担当者をシステム導入チームに加えることが肝要です。現場での原価データ入力についての知識がなければ、実用性の高いシステムは構築できません。

 

従業員数の少ない中小企業では、システム導入チームに人手を割きにくい場合もあるでしょう。しかしながら、実用的な原価管理システムを導入できれば、業務現場の負荷が大きく軽減されます。こうした現場が得られる利点を担当者に伝えて、システム導入に積極的に協力してもらいましょう。

原価管理システムの導入に動き出そう

原価管理システムの導入を成功させるには、システムに求める要件を細かく定義した上で、サービス比較を行うことが肝要です。要件定義やサービス選定には、現場担当者の意見を反映しましょう。原価管理に関わる従業員の知見を取り入れることが、システム導入を成功させるためのポイントです。以上を踏まえて、具体的なサービス選定に進んでください。