倉庫管理を効率化する「倉庫管理システム(WMS)」。入出庫作業や在庫管理などに役立つ機能が備わるサービスです。煩雑になりがちなロケーション管理をリアルタイムで行えるなど多くのメリットがあります。ここでは、倉庫管理システムの機能や導入メリット、システム導入により実現できることを解説します。
倉庫管理システムの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
倉庫管理システム(WMS) 6選|比較・選定ポイントとおすすめWMSの特徴
倉庫管理システム(WMS)とは
倉庫管理システムとは、倉庫の情報管理をデジタル化するシステムです。入出庫管理や在庫管理、人員管理などを効率化する機能が備わっており、WMS(Warehouse Management System)とも呼ばれます。
倉庫管理システムは庫内物流の管理に特化したシステムであり、在庫管理システムとは異なる役割を持ちます。在庫管理システムは入荷予定在庫や預け在庫といった倉庫外の在庫情報も扱いますが、倉庫管理システムは倉庫内の管理や作業効率の向上を目的としている点が大きく異なります。
上記の違いから、倉庫管理システムは在庫管理システムや基幹システムのサブシステムとして活用されることが一般的です。倉庫管理システムを導入することにより、自社倉庫の現場環境に合わせた、効率的な在庫管理および庫内業務が可能となります。
倉庫管理システムで実現できること
倉庫管理システムの導入により実現できることは、次の4つです。主要な機能とともに見ていきましょう。
入荷・入庫作業を効率化
倉庫管理システムに備わる機能により、入荷・入庫作業を効率化できます。デジタルツールの利点を活かした、効率的で正確な作業が可能となります。
- 入荷作業の進捗をシステムで管理
- システムに登録した情報から入荷予定リストを発行
- ハンディターミナルで入荷検品(バーコード検品)
- 一部サービスではスマートフォンでの検品も可能
- 検品完了時に入庫ラベルを発行
- 入荷ラベルに記載のロケーション指示で棚入れ
在庫管理を効率化
倉庫管理システムの導入により、煩雑な在庫管理を効率化できます。在庫に関する各種情報をシステムに集約し、一元管理できるようになります。
- 在庫情報や受払情報をシステムで参照・管理できる
- ロケーション情報や在庫区分を管理
- 倉庫間の在庫移動情報を管理
- セット品の構成と在庫データを管理
- 在庫補充点をシステムで管理
- 製品ロット・製造年月日・賞味期限などに基づく出荷期限を設定
- 鮮度管理(食品)やサイズ管理(衣料)など業種に応じた情報管理が可能
出荷作業を効率化
倉庫管理システムは出荷作業を効率化させます。手間のかかるピッキングや検品、帳票発行などを効率化する機能が備わっています。
- 出荷指示帳票とピッキングリストをシステムで発行
- ピッキングリストでロケーション情報を参照できる
- ハンディターミナル・スマートフォンで出荷検品
- 納品明細書・梱包明細書を発行
- 積込リストや送り状を配送業者別に発行
棚卸を効率化
倉庫管理システムには棚卸管理機能が備わります。手作業では時間のかかる棚卸をシステムの機能で大幅に効率化できます。
- 棚卸作業リストを出力
- ハンディターミナル・スマートフォンで棚卸入力
- ロケーションや区域などを指定しての循環棚卸が可能
倉庫管理システムの導入で得られる効果・メリット
倉庫管理システムの導入による効果・メリットには、次のものがあります。
属人化解消とミス削減
人力だけで庫内作業を行う現場では、従業員の生産性に差が生じがちです。特に多いのが、各従業員が独自に商品の保管場所を覚えており、ピッキングの所要時間がベテランと新人で大きく異なるケースです。こうした現場でベテラン従業員が休むと、生産性が著しく低下したり、新人の負荷が増えたりして作業ミス増加につながります。
倉庫管理システムを導入すれば、ピッキングリストでのロケーション確認が可能となり、従業員間の生産性の偏りが是正されます。情報端末での検品が可能となることもシステム導入のメリットです。作業の正確性が大きく向上し、引いては生産性向上にもつながります。
人件費と保管コストを削減
庫内業務の簡易化・標準化により業務時間を短縮できるため、人件費削減につなげることが可能です。また、在庫管理機能により在庫量を調整して、保管コストを削減することもできます。
くわえて、アナログな手法で在庫管理する企業では、滞留在庫や死蔵品が放置されがちです。特に商品の種類ごとに管理担当者が異なる場合は、全在庫品の一元管理が難しくなり、経営層が動きのない在庫品に気付きにくくなります。
無駄な在庫は保管コストを増加させるため、なるべく減らすことが肝要です。倉庫管理システムを導入すれば、在庫管理のフォーマットが統一され、経営層が在庫数を把握しやすくなります。動きのない商品にも気付きやすくなり、保管コストを削減することにつながります。
システム連携による柔軟な物流管理
倉庫管理システムを在庫管理システムやERPなどの基幹システムと連携させることにより、次のような柔軟な物流管理が可能となります。
- 各倉庫の現場環境に合わせた物流管理
- 荷姿や製造年月日などモノの状態にあわせた細やかな在庫管理
- 需要や環境の変化に応じてシステムを素早く修正・変更
ビジネス全体を管理する基幹システムだけでは、上記のような物流管理はできません。特に取扱商品が数百種類におよぶ企業では、基幹システムだけで細かな物流管理を行うことは困難です。取引やモノの流れ全体を基幹システムで監視し、庫内物流を倉庫管理システムで管理することにより、大規模な物流も緻密かつ柔軟にマネージメントできるようになります。
倉庫管理システムの機能一覧
倉庫管理システムの主要機能を一覧表にまとめました。ただし、搭載されている機能は各社で異なるため、事前に確認してください。
機能 |
特徴 |
---|---|
商品情報管理機能 |
・商品マスタを個別登録 ・商品マスタをCSVで一括登録 ・商品マスタをCSVで出力 ・セット品構成マスタを登録管理 ・各種商品情報をシステムで検索 |
倉庫・業務情報管理機能 |
・倉庫マスタを登録管理 ・ロケーションマスタを登録管理 ・担当者マスタを登録管理 ・納品先マスタを登録管理 ・取引先マスタを登録管理 ・運送業者マスタを登録管理 ・各種情報をシステムで検索 |
入荷・入庫管理機能 |
・入荷予定情報を登録 ・入荷予定リストを発行 ・情報端末で入荷検品と入庫入力 ・商品情報とロケーション指示が記載された入庫ラベルを発行 ・入荷作業の進捗をシステムで確認 |
出庫管理機能 |
・出荷データを登録(個別登録・一括登録) ・出荷データと在庫情報を引当 ・出荷指示帳票を発行 ・ピッキングリストを発行 ・情報端末で出庫検品 ・納品明細書を発行 ・積込リストを発行 ・各配送業者専用の送り状を発行 ・出荷実績をシステムに登録 |
在庫管理機能 |
・商品別に在庫情報を閲覧 ・ロケーション別に在庫情報を閲覧 ・在庫履歴を閲覧 ・在庫情報をCSV出力 ・在庫情報をCSVで一括登録 ・ロケーション移動を指示 ・倉庫間の移動を指示 ・期限切れの在庫を照会 |
棚卸機能 |
・棚卸チェックリストを発行 ・情報端末で棚卸入力 ・棚卸差異リストを発行 ・棚卸確定情報を入力 |
外部連携機能 |
・各種基幹システムとデータ連携(CSV・API) ・ECシステムと連携 |
倉庫管理システムを物流管理に活用しよう
入出荷作業や在庫管理の効率化、コストと人的ミスの削減など、倉庫管理システムは自社に多数のメリットをもたらします。また、基幹システムと倉庫管理システムを併用すれば、正確で柔軟な物流管理システムを構築できます。以上のように多数のメリットをもつ倉庫管理システムですが、サービス選定は慎重に進めましょう。機能やコストなどを比較して、自社に適するサービスを選び出すことが肝要です。
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