不正な通信やサイバー攻撃を検知・防御する「IDS(不正侵入検知システム)・IPS(不正侵入防御システム)」。通信の中身をチェックして不正アクセスを検出・防御し、自社サーバーやシステムを脅威から守ります。ここでは、IDS・IPSで実現できることや機能一覧、導入するメリット・効果を紹介します。
IDS・IPSとは
IDS・IPSは、ネットワーク上の不正アクセスを検知・防御する情報セキュリティシステムです。IDS(Intrusion Detection System)は「不正侵入検知システム」、IPS(Intrusion Prevention System)は「不正侵入防御システム」を意味しています。
IDSは異常な通信を検知・通知する機能に特化しており、IPSは検知した後に「防御・遮断」まで対応します。
不正アクセスを検知・遮断する代表的なシステムには「ファイアウォール」がありますが、その役割はIPアドレスやポート番号などの情報から通信の許可・ブロックを行うというものです。したがって、通信内容の正常・異常までは判別できません。IDS・IPSでは通信の中身を監視して正常でない通信を検知・遮断するため、セキュリティレベルを向上できます。
IDS・IPSで実現できること
IDS・IPSを導入すると、以下の3点を実現できるようになります。
ネットワークやサーバーの常時モニタリング
IDS・IPSを設置すると、社内システムを脅かす攻撃・脅威がないか24時間365日モニタリングします。IDS・IPSには、ネットワーク上のトラフィックを監視する「ネットワーク型」と、サーバーを監視する「ホスト型」の2タイプあります。
ネットワーク型 |
・ネットワーク上を流れる通信パケットの中身を監視する ・監視したいネットワークが複数ある場合は、それぞれに設置する必要がある |
ホスト型 |
・サーバーにインストールして中身を監視する ・監視したいサーバーが複数ある場合は、サーバーごとにインストールする必要がある |
異常な通信やサイバー攻撃を検出する
IDS・IPSでは、異常(または正常)とみなす通信パターンや条件を登録しておくことで、不正なアクセスを検出します。検知方法は以下の2種類です。
▼検知方法
シグネチャ型 |
・異常とみなすパターンをあらかじめ登録し、一致するものを不正として検知 ・既知の不正パターンにしか対応できない |
アノマリ型 |
・正常値のパターンをあらかじめ設定し、正常値と異なるトラフィックを検出する ・未知の不正アクセスにも対応できるが、シグネチャ型に比較すると誤検知が多い |
通信の中身をチェックすることで、以下のようなサイバー攻撃を検出・防御することが可能です。
▼IDS・IPSで防げる攻撃の種類
DoS攻撃 |
大量のデータを送り付け、システムに負荷をかけて稼働を停止させる |
Synフラッド攻撃 |
大量の接続要求通信(SYN)を送り付け、相手がネットワークに接続できないようにする |
バッファオーバーフロー攻撃(BOF) |
メモリー領域(バッファ)の上限を超える大量のデータを送り付け、システムに誤作動を起こさせる |
不正・異常なアクセスを遮断する
不正アクセスなどの異常を検出すると、IPSの機能によって自動的にトラフィック(通信)をブロックします。
- 不正トラフィックの遮断
IDS・IPSの導入で得られる効果
IDS・IPSの導入によって期待できるメリット・効果は以下の2点です。
情報セキュリティ対策の強化
サイバー攻撃のパターンや侵入方法は多岐にわたり、適切なセキュリティ対策ツールは脅威の種類によって異なります。IDS・IPSでは、ファイアウォールやWAF(Webアプリケーションファイアウォール)で対処できないネットワーク上の攻撃を防御できるため、セキュリティ対策を強化できます。
サーバーダウン・システム障害の防止
サイバー攻撃を受けると、自社サーバー・システムが機能停止に陥る可能性があります。IDS・IPSを導入すれば、サーバーやシステムに過剰な負荷をかけるDoS攻撃・Synフラッド攻撃などを検知・防御できるため、障害を防止することができます。
IDS・IPSの機能一覧
IDS・IPSの主な機能を以下にまとめました。
機能 |
内容 |
---|---|
監視(ネットワーク監視/サーバー監視) |
・ネットワークやサーバーを監視する ・監視対象はタイプによって異なる ー「ネットワーク型」ではネットワーク上の通信パケットの中身を関し ー「ホスト型」ではサーバー内のファイルやログファイルを監視 |
シグネチャ検知(不正検出) |
異常なアクセスのパターン(シグネチャ)をあらかじめ設定し、合致するトラフィックを不正侵入や攻撃として検出する |
アノマリ検知(異常検出) |
正常時の通信量やアクセスのパターンを設定し、そこから外れる通信パターンを検知する |
管理者通知 |
検出した異常な通信を管理者に通知する |
不正トラフィックの遮断(IPSのみ) |
検出した異常・不正な通信をブロックする |
どの機能が搭載されているかはツールによって異なります。選択の際は注意しましょう。
IDS・IPSで社内システムを防御しよう
IDS・IPSは、ネットワークやシステムに対する攻撃・脅威を防ぐ有効なセキュリティシステムです。通信の中身をチェックすることで、ファイアウォールではカバーできないサイバー攻撃を検知・防御します。それに伴い、サーバーダウンやシステム障害のリスクを低減できます。
IDS・IPSの選び方については、以下の記事を参考にしてください。