従業員への福利厚生に役立つ給与前払いサービス。労務の負担を抑えつつ、給与の前払いを実現できるサービスとして多くの企業に活用されています。この反面で、近年は多数の類似サービスが登場しており、サービス選定が難しくなっています。ここでは、給与前払いサービスの選定ポイントと利用時の注意点を解説します。
また、導入実績の多い代表的な給与前払いサービスをご紹介します。実際に利用する企業の活用事例も交えながら、サービスの強みや特徴の解説を行います。自社の課題や目的に照らし、適切なサービスを見つけてください。
給与前払いサービスの比較方法・選び方
給与前払いサービスを選ぶときのポイント
給与前払いサービスの選定ポイントは、次の5つです。
■サービスのタイプを決定する
給与前払いサービスの選定でまず決定したいのが、利用するサービスのタイプです。大きく次の2タイプがあります。
●立て替えタイプ
ベンダー側が前払いする給与を立て替えるタイプです。利用企業は前払い用の資金を準備しなくても利用できるため、自社のキャッシュフローを圧迫しません。手数料は従業員が負担する仕組みになっており、サービスによっては企業側の負担をゼロにできます。
●引き落としタイプ
自社の口座から給与を引き落としされるタイプです。あらかじめ資金準備が必要であり、かつ利用手数料は企業負担となります。手間とコストのかかるタイプではあるものの、従業員への負担が生じません(ATM手数料は従業員負担)。
以上の特徴を踏まえて、自社の事情や導入目的に合ったタイプを選ぶことが必要です。
■利用条件をチェックする
給与前払いサービスの選定では、サービス利用条件を詳しくチェックしましょう。次のポイントを参考にして、自社で利用しやすいサービスを選定してください。
- 契約に財務審査は必要か
- 法人口座の開設は必要か(引き落としタイプ)
- 送金元口座とする金融機関に制限はあるか(引き落としタイプ)
- 前払いした給与の決済方法(立て替えタイプ)
上記のほか、サービス導入にかかる期間も確認しておきましょう。給与前払いサービスの申し込みから利用開始までに要する期間は、即日〜1カ月程度とサービスにより大きく異なります。自社で利用開始したい時期を考慮して、適切なサービスを選んでください。
■利便性を比較する
給与前払いサービスの利用者は従業員です。従業員にとって利便性の高いサービスを選定しましょう。具体的には、次のポイントをサービス選定時にチェックしてください。
- 前払い申請から振込実施までに要する時間
- ATMでの直接出金への対応(振込なしでの給与受取は可能か)
- 専用スマホアプリの動作環境(OSの種類やバージョンなど)
振込実施に要する時間は、振込先の銀行により異なる場合があります。こうした細かな条件も漏らさず確認しておきましょう。ATMで直接出金できるサービスを選ぶ場合は、提携ATMの種類もチェックしてください。
■勤怠システムとの連携性をチェックする
給与前払いサービスと勤怠システムを連携させることにより、前払い制度の運用を効率化できます。自社で勤怠システムを利用しているなら、利用中のシステムと連携できるサービスを選定しましょう。
現時点で勤怠システムを導入していない場合も、連携できるシステムのチェックは行ってください。対応システム数の多いサービスを選んでおけば、勤怠システムを導入する際の選択肢が広がります。
■利用コストを比較する
導入候補とする給与前払いサービスを絞り込んだら、コストの比較を行いましょう。まずチェックしたいのが月額基本料金(システム利用料)です。立て替えタイプと引き落としタイプを問わず、月額基本料金は企業負担となります。料金相場は月額1〜5万円程度。基本料無料のサービスもあります。
基本料金を確認したら、前払い申請1回あたりの手数料をチェックしましょう。給与前払いサービスの利用手数料は、申請1回あたり200〜400円程度(または申請額の5%程度)です。引き落としタイプでは企業が、立て替えタイプでは従業員が利用手数料を負担します。どちらのタイプを導入する場合も、コスト面で無理のないサービスを選定してください。
課題・ニーズから選ぶ給与前払いサービスの向き・不向きの傾向
給与前払いサービスの選定は、自社のニーズや課題を踏まえて進めることが肝要です。次の表を参考にして、どのようなタイプのサービスが自社に向くのか検討してください。
課題・ニーズ |
向き・不向きの傾向 |
---|---|
導入後に従業員が使ってくれるか不安 / 若い従業員が利用しやすいサービスを探している |
・専用スマホアプリの評価が高いサービスは使い勝手の判断目安になる(Google PlayやApp Storeで評価を確認する) ・従業員の負担軽減を最優先するなら、引き落としタイプのサービスが向いている ・従業員が負担する手数料が高額な立て替えタイプは、逆に生活を圧迫する要因となるため注意が必要 |
給与口座の銀行が従業員ごとに大きく異なる / 自社の周辺に銀行が少なく給与受取に不便 |
・コンビニATMでの直接出金が可能なサービスが適している ・提携銀行が豊富なサービスであれば対応しやすい |
リモートワークの従業員に活用してもらいたい / 勤怠データをなるべくスピーディに前払いへ反映させたい |
・クラウド勤怠管理システムと連携できるサービス ※クラウド勤怠管理システムでは場所を問わず打刻が行えるため、スピーディに勤怠情報を前払い可能額へと反映できる |
給与前払いサービスの利用時に注意すべき点
引き落としタイプの給与前払いサービスでは手数料が企業負担となりますが、自社の取り決めで従業員負担とすることも可能です。ただし、手数料を給与控除とする場合は、労使協定を改定しなければなりません。労使協定の改定なしで給与控除を行うと、労働基準法違反となる可能性があるので要注意です。
労働基準法第24条では、給与の全額を直接労働者に支払うよう規定しています。同法に反しないように手数料の賃金控除を行うには、給与前払いサービスの利用に合わせた新たな就業規則の制定が必要です。
こうした労使協定に関わる規則の新設は、専門家の監修のもとで行ったほうがよいでしょう。手数料の賃金控除を前提に、引き落としタイプの導入を検討しているなら、まず労使協定の改定について専門家に相談してください。
給与前払いサービスの導入に動き出そう
給与前払いサービスを利用する際は、まずサービスを慎重に選定しましょう。利用条件や利便性、コストなどを詳しくチェックして、企業側と従業員の双方にとって使いやすいサービスを選び出してください。サービス導入フェーズでは、サービスの利用方法が法律に抵触しないか確認しましょう。専門家監修のもとでサービス導入を進めると安心です。以上を踏まえて、具体的なサービス選定へ進んでください。
給与前払いサービス 4選
1.CRIA
(参照元:https://www.metaps-payment.com/service/cria/index.html)
サービス名 |
CRIA |
キャッチフレーズ |
アプリで簡単申請! 給与即時払いサービス |
サービス概要 |
従業員様が働いた分の給与を、即時で受け取れる給与即時払いサービスです。 |
向いてる形態 |
BtoC |
価格 |
・企業様 0円 / 1企業 |
運営企業 |
|
サービス詳細 |
2.enigma pay
(参照元:https://www.enigma.co.jp/pay/)
サービス名 |
enigma pay |
キャッチフレーズ |
働いた分だけの給与をいつでも、どこでも受け取り可能 |
サービス概要 |
●前払給与サービス |
向いてる形態 |
BtoB/BtoC |
機能一覧 |
・振込業務は必要なし |
価格 |
・価格はお問合せください |
運営企業 |
|
サービス詳細 |
3.CYURICA
(参照元:https://www.cyurica.jp/)
サービス名 |
CYURICA |
キャッチフレーズ |
お給料日を待たずに、 お給料をATMから引き出せる |
サービス概要 |
●口座振込をせずに全国10万台以上のATMから給与受け渡し |
向いてる形態 |
BtoB/BtoC |
機能一覧 |
・システム連携 |
価格 |
・0円 / 企業側導入コスト0円 |
運営企業 |
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サービス詳細 |
4.Payme
(参照元:https://payme.tokyo/)
サービス名 |
Payme |
キャッチフレーズ |
給与前払いサービスなら Payme |
サービス概要 |
Paymeは、給与日を待たずに働いた分の給与を受け取れるようにする給与即日払いサービスです。福利厚生として導入していただくことで、求人応募数や従業員定着率の向上に大きく貢献します。 |
向いてる形態 |
BtoB/BtoC |
導入社数 |
約 300 社 (2021年02月19日時点) |
機能一覧 |
・外部連携サービス(MF クラウド給与) |
価格 |
・0円 / 企業側導入費用 |
運営企業 |
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サービス詳細 |