働き方の多様化が進む昨今、煩雑化する給与計算の効率化を目的に給与計算ソフト(給与計算アプリ)の導入を進める企業が増えています。現在は法改正や複雑な計算に対応する多機能なタイプなど、さまざまなソフトが提供されています。ここでは、給与計算ソフトの機能や導入メリットなどを解説します。
給与計算ソフトの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
給与計算ソフト 7選|比較・選定ポイントとおすすめ「給与計算アプリ・システム」の特徴や活用事例
給与計算ソフトとは
給与計算ソフトとは、従業員の給与計算に用いるツール(ソフトウェア)です。給与計算業務を効率化でき、かつ年末調整にも役立つ多機能性から、給与計算システムとも呼ばれます。
従来であれば、PCやサーバーにインストールするタイプ(ソフトウェアタイプ・オンプレミスタイプ)が給与計算ソフトの主流でした。現在はインターネット上のアプリケーションを利用するクラウド型ツール(給与計算クラウド)が普及しており、より柔軟な運用が可能となっています。
給与計算には、自動計算機能をはじめとする多様な機能が備わっています。各種機能が企業にもたらすメリットは大きく、給与計算に関連する多くの問題を解決してくれます。
給与計算ソフトで実現できること
給与計算ソフトの導入によってどんなことが実現できるのか、主な機能例とともに解説します。
給与計算を効率化
給与計算ソフトは多彩な機能により、給与処理の多くを自動化できます。代表的な機能には以下のものがあります。
- 勤怠管理システムから勤怠データをインポート
- 多様な給与形態に対応(月給・時給・日給など)
- 残業代の計算を自動化
- 各種手当、保険料、税金などを自動計算
- 税率・保険料率を自動アップデート(給与計算クラウド)
- 賞与計算にも対応
給与明細の配布を効率化
給与計算ソフトの導入により、給与明細の配布を効率化できます。紙の明細書に代えて、電子明細書を配布することが可能。印刷や仕分けなどの手間とコストを省けます。
- 電子給与明細を自動作成
- メールで給与明細を配布
- Webでの明細書閲覧も可能
- 明細書の印刷も可能
年末調整を効率化
給与計算ソフトは年末調整業務を効率化します。高度な計算機能とペーパーレス化機能により、年末調整の手間を大きく削減できます。
- 給与総額を自動集計
- 各種申告書(扶養控除・保険料控除)をペーパーレス化
- 控除額や税額を自動計算
- 提出書類(源泉徴収票・法定調書合計表など)を印刷
給与計算ソフトの導入で得られる効果
給与計算ソフトの導入によるメリットは、次の3つです。
給与計算にかかるコストを削減
エクセルなどを利用した給与計算では、複雑な給与規定や残業代規定、多様な給与形態に対応するための高度なスキルが必要です。ある程度まで計算を自動化できても、手入力が必要な作業は残るうえ、目視による入力チェックにも手間がかかります。
給与計算ソフトの連携機能と計算機能を活用すれば、給与処理の大部分を自動化できます。勤怠管理システムとの連携により、勤怠情報の入力を自動化することも可能です。多くの作業を自動化できれば、作業時間の短縮や人的リソースの削減につながります。
人的ミス防止に役立つ
給与計算は複雑であり、ミスをゼロにすることは容易ではありません。固定給変更にともなう保険料控除額の見直し、税率・保険料率の改定など、給与計算上の注意点は多数あります。手作業で計算を行う限り、ヒューマンエラーが生じる可能性は高まります。
給与計算ソフトには、標準報酬月額を自動で決定する機能や改定の必要を通知する機能などが備わっています。加えて、給与計算クラウドでは保険料率や税率が自動アップデートされます。これらの機能を活用すれば、給与計算のチェック項目を減らすことが可能。チェック漏れによる人的ミスを防止できます。
給与処理の属人化を解消
エクセルでの管理と異なり、給与計算ソフトの使用には専門知識を要しません。多くの計算が自動化されるため、経理に詳しくない社員でも、無理なく給与計算を行えます。
また、エクセルで給与計算を行う環境では、給与処理業務が属人化しがちです。給与計算表の作成にはエクセル関数のスキルを要するうえ、規定改定や税率変更などの対応にも知識が必要になります。担当者が属人的に運用しているケースも少なくありません。
給与計算ソフトは、初期設定や入力操作が簡単に行えるように設計されています。多くのツールにガイド機能が備わっており、初めて給与計算を行う人でも使用することが可能です。もし作業に行き詰まってしまっても、ツール提供元のサポートサービスにより問題を解決できます。
給与計算ソフトの機能一覧
給与計算ソフトの基本機能を一覧表にまとめました。
機能 |
特徴 |
---|---|
給与ルール設定機能 |
・給与規定を設定 ・残業代の計算ルールを設定 ・給与明細項目を設定 ・控除項目を設定 ・給与形態ごとに従業員をグループ分け |
給与計算機能 |
・勤怠管理システムから勤怠データをインポート ・CSV形式で勤怠データをインポート ・給与を自動計算(月給・時給・日給などに対応) ・雇用形態に応じて計算式を変更 ・通勤手当を自動計算 ・社会保険料を自動計算 ・雇用保険料を自動計算 ・所得税を自動計算 ・賞与を自動計算 |
年末調整機能 |
・年間の給与総額を自動集計 ・各種申告書(保険料控除申告書・配偶者特別控除申告書など)をペーパーレス化 ・各種控除額を自動計算 ・各種帳票(源泉徴収票・還付金明細書など)を自動作成 ・各種提出書類(給与支払報告書・源泉徴収票など)の印刷が可能 |
明細書配布機能 |
・電子給与明細書を自動で作成 ・メールで電子明細書を配布 ・Webでの明細書閲覧が可能 ・過去の明細書もウェブで閲覧可能 ・給与明細のプリントアウトも可能 ※明細書の配布方法はツールにより異なる |
自動アップデート機能(給与計算クラウドの機能) |
・税率や保険料率を自動アップデート(改定に自動対応) |
給与計算ソフトを活用しよう
給与計算ソフトの導入により、給与処理業務を効率化できます。高度な自動計算機能により、給与処理の手間を大きく削減することが可能。作業時間も短縮されるため、人件費の削減にもつながります。人的ミスの防止や、給与処理の属人化解消にも給与計算ソフトは有効です。ただし、ツール選定は慎重に行ってください。機能やコストなどを詳しく比較して、自社に適するツールを選ぶことが肝要です。
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