従来、紙で行われてきた各種契約を電子文書のやり取りだけで完結できるようになる「電子契約サービス」。電子署名やタイムスタンプの機能により、紙の文書と同様の法的効力を持つ契約書の作成も可能です。ここでは、電子契約サービスの機能や導入メリットを解説します。
電子契約サービスの導入を検討している方は以下の記事も参考にしてください。
電子契約サービス 16選|比較・選定ポイントとおすすめ「電子契約システム」の特徴や活用事例
電子契約サービスとは
電子契約サービス(電子契約システム)とは、電子文書により契約手続きを行うシステムです。インターネット上で書類を共有し、契約を締結できます。
2000年に電子署名法が施行され、本人証明ができる電子署名の法的な効力が認められました。これにより、従来の紙と印鑑による契約締結に代わるものとして、電子契約が普及しつつあります。また、電子帳簿保存法により、タイムスタンプの付与など一定の要件を満たす電子文書は、紙の原本と同様に正式な書類としての保存が認められています。
法的効力を担保するうえでポイントとなるのが、電子署名の本人証明とタイムスタンプです。印影や署名を容易にコピーできないようにするため、秘密鍵と公開鍵と呼ばれる暗号化の仕組みが用いられています。本人だけが知り得る「鍵」を使うことによって、本人証明とすることができます。
タイムスタンプは電子署名が行われた日時が記録される仕組みで、署名後に改ざんがないことを証明できます。これらの仕組みにより、紙の文書と同等の効力を持たせることが可能になります。したがって、紙の書類から電子契約サービスへの切り替えにより、契約の信頼性が損なわれる心配はありません。紙文書と同等の効力を確保しつつ、契約業務や文書保管を効率化できます。
電子契約サービスで実現できること
電子契約サービスの導入により実現できることは、以下の4つです。ただし、サービスによって提供されている機能は異なるため注意してください。
契約手続きを効率化
電子契約サービスの導入により、紙の書類を使うことなく、システム上で契約を締結させることが可能です。
- 電子契約書を発行
- 書類のやりとりがインターネット上で完結する
- 電子署名とタイムスタンプで法的効力を持つ契約書を作成
契約情報の管理を電子化
電子契約サービスには契約情報を保管・管理する機能が備わっています。
- クラウド上に契約書データを保存
- 紙の契約書もアップロード可能(スキャンしてアップロード)
- 契約書の有効期限や更新期限を管理・通知
- 各種項目(管理番号や契約者など)で契約書を検索可能
契約書の承認フローを効率化
電子契約サービスにはワークフロー機能が備わっています。社内における契約書の承認フローを設定することが可能です。
- 契約書の承認フローを設定
- ステータス管理
- リマインド通知
連携機能で業務を効率化
電子契約サービスの多くは、外部ツールとの連携機能を備えています。自社で使用中のツールと連携させて、契約業務を効率化することが可能です。
- 外部ツール・システムとAPI連携
- 外部ツールの顧客データから契約書を作成
電子契約サービスの導入で得られる効果
契約業務をスピードアップ
電子契約サービスの導入により、各種契約に関する業務をスピードアップできます。紙の書類による契約手続きは、書類の発送や先方での確認と押印、書類返送といったステップを必要とするため、数日間を要します。
これに対して、電子契約サービスを使った契約手続きはインターネット上で書類を共有するため、郵送によるタイムロスが生じません。書類の修正もシステム上で素早く行えます。
契約業務のコストを削減
契約手続きの電子化により、印刷コストと郵送コストを削減できます。また、電子契約は印紙税の対象外となるため、印紙代がかかりません。契約業務の効率化が進めば、人件費削減も期待できます。
契約情報の管理を効率化
電子契約サービスの保管機能を活用すれば、安全かつ効率的に契約情報を管理できます。紙の契約書は保管場所を要するうえ、印刷の劣化や災害による消失の恐れがあります。多くの電子契約サービスでは、データの多重バックアップなどシステム障害や災害のリスクに備えています。また、電子文書は簡単に契約情報の検索できる点も、効率化におけるメリットです。
電子契約サービスの機能一覧
電子契約サービスの主要機能を表にまとめました。ただし、どの機能が搭載されているかは各社のサービスによって異なるため、事前に確認してください。
機能 |
特徴 |
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契約書作成機能 |
・契約書のテンプレートを登録 ・テンプレートから契約書を作成 ・外部で作成した契約書(PDF・Wordなど)のアップロードも可能 |
契約締結機能 |
・契約書を相手方と共有(システム上で共有) ・契約書へのファイル添付(画像・補足書類などの添付)が可能 ・契約書に電子署名を付与(送信時・返信時に付与) ・契約書にタイムスタンプを付与(契約締結時に付与) ・スマホやタブレットを使った手書き署名が可能(一部サービス) ・契約書を差し戻し(受領側が操作) ・差し戻しにコメントを入れることが可能 |
ワークフロー機能 |
・契約書のワークフロー(作成・承認など)を設定 ・承認ステータスの管理 ・リマインド通知 |
契約書管理・保管機能 |
・契約書をクラウド上に保管 ・紙の書類をPDF化して保管 ・ストレージ内にフォルダを作成 ・閲覧制限を設定 ・契約更新期限を通知(契約書ごとに期限を設定可能) ・電子証明書の有効期限を通知 ・各種情報(署名者・締結日・相手方など)から文書を検索 ・契約書一覧表をダウンロード(CSV形式) |
連携機能 |
・ワークフローシステム・CRM・SFA・グループウェアなどの外部システムと連携 |
管理・セキュリティ機能 |
・操作ログを閲覧 ・IPアドレス制限(システムにアクセスできるIPアドレスを制限) ・パスワード設定 |
電子契約サービスの選定は慎重に
電子契約サービスの導入により、各種契約手続きを効率化できます。契約書の印刷や郵送を省略することができ、コストを削減できることも導入メリットです。多数の利点を持つ電子契約サービスですが、サービス選定では機能や使いやすさを吟味して、自社に適するサービスを選ぶことが肝要です。
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